この地域は瀬戸内海沿岸工業地帯として鉄、化学、造船、自動車と素材型、加工組立型産業をフルセットで備えた、かつての日本高度成長のリード役であった。 中でも、広島、呉、岩国、大竹は戦前の軍用施設とその技術を引き継いで発展してきた。 その後オイルショック、円高不況などの厳しい経済環境により各企業は事業の見直しを迫られ、撤退や高付加価値製品製造の新分野参入なども試みた。 県下の工業出荷額平成5年度は図1の如く輸送用機械、一般機械、鉄鋼業の三業種合計54.5%であり、比較のために高度成長期の昭和47年出荷額を見ると57.1%であったから減少はしているものの、溶接に関係する産業の比重は依然大きい。 また、広島県は河川も多く、瀬戸内海の島嶼に恵まれているため、交通の発展に伴い橋梁の需要は大きい。 県内の橋梁メーカーの生産量は全国の橋梁生産量の7%に当たる。 代表産業である輸送機器の最近の推移は図2のように減少傾向にある。 一方、航空機体、ジェットエンジンの部品製造などが新しく目を出しつつある。
図1:製造品出荷額業種別構成比
図2:自動車部門・造船部門の製造品出荷額等の推移
産業構造転換の施策としてテクノポリス法指定の東広島市周辺(図3)は先端技術の試験研究機関が稼働を始め、エレクトロニクス、新素材、バイオテクノロジーなどハイテク産業の誘致も進み、新産業創造の拠点として発展している。 溶接技術の点では対象材料は鉄鋼から軽合金、耐熱合金へ、また溶接方法もろう接、拡散接合、電子ビーム溶接など多様化しつつある。
図3:広島中央サイエンスパーク
瀬戸内三橋時代を間近にして広域交流経済圏の基礎づくりも整備されている。 広島県の工業は”ものづくり”の伝統を受け継ぎながら研究開発機能を背景とした新産業発展の段階に入った。